本文へスキップ
AI Advance株式会社
AI導入 AI Advance
公開日: AI導入AI研修

AI推進室の作り方|専任がいない中小企業の進⁠め⁠方

執筆: 池田 哲郎(代表取締役・中小企業診断⁠士⁠)

「AIを本格的に使っていきたい。でも、任せられる社員がいない」。ここ最近、経営者の方から最も多くいただくのが、この相談です。ツール自体は無料でも試せる時代になり、興味のある社員が個人で触っている会社も増えました。それでも会社全体の動きにならないのは、旗を振り、続きを管理する人がいないからで⁠す⁠。

大企業はこれを「AI推進室」や「AI推進部」といった専門部署で解決しています。では、専任を置けない中小企業はどうすればいいのか。この記事では、AI推進室という考え方を中小企業の身の丈に翻訳し、専任のAI人材がいなくても回る体制の作り方を、具体的な手順まで整理しま⁠す⁠。

AI推進室とは何か——大企業の話ではなくな⁠っ⁠た

AI推進室(AI推進部)とは、会社全体でAIの活用を進めるために、旗振り・ルール作り・教育・仕組み化をまとめて担う組織のことです。個々の社員がバラバラにAIを触るのではなく、「どの業務から使うか」「何を入れてはいけないか」「成果をどう測るか」を一つの窓口で決め、全社に広げていく役割を持ちます。呼び名は会社によってAI推進室・AI推進部・AI活用推進室などさまざまですが、担う機能は同じで⁠す⁠。

もともとこれは大企業の話でした。専任チームを組み、外部のコンサルを入れ、全社導入を計画する——予算も人もある会社の取り組みです。ところがこの1〜2年で状況が変わりました。AIが一部の担当者の特別な道具ではなくなり、文章づくり・要約・調べもの・たたき台づくりといった日常業務に、どの会社でも効くようになったからで⁠す⁠。

つまり、AI推進室が扱うテーマは、いまや従業員数十人の会社にも等しく存在します。変わったのは「専門組織が要るか」ではなく「その機能を誰がどう持つか」です。 専任の部署という『器』は中小企業には重すぎますが、器が担っていた機能そのものは、規模を問わず必要になりました。この記事の狙いは、器を持たずに機能だけを持つ方法を示すことにありま⁠す⁠。

AI CoE(Center of Excellence)とは——エンタープライズの型を中小向けに⁠翻⁠訳

AI推進室を調べていくと、必ず「AI CoE」という言葉に行き当たります。AI CoE(Center of Excellence/AI活用推進の中核組織)とは、社内に散らばるAI活用の知見・ルール・成功事例を一箇所に集約し、全社へ横展開する司令塔となる組織や役割を指します。 直訳すれば「卓越性の中核」。大企業が全社にAIを広げるときの標準的な型として、ここ数年で急速に使われるようになった用語で⁠す⁠。

AI CoEが担うとされる役割は、おおむね次の4つに整理できま⁠す⁠。

  • 戦略と優先順位づけ: どの業務から着手するかを全社視点で決⁠め⁠る
  • ルールとガバナンス: 情報の入力ルール、使ってよいツールの選定、リスクの⁠管⁠理
  • 教育と人材育成: 全社員のリテラシー底上げと、推進役の⁠育⁠成
  • 共通基盤と横展開: 成功した使い方を他部門へ広げ、仕組みとして⁠残⁠す

大企業ではこれを専任チームと大きな予算で回します。しかし中身をよく見ると、特別なことは一つもありません。「どこから始めるかを決め、ルールを整え、人を育て、うまくいった型を横に広げる」——これは10人の会社でも100人の会社でも変わらない、AI活用の当たり前の段取りで⁠す⁠。

だから中小企業がAI CoEをそのまま真似る必要はありません。専任チームを『経営者+現場の推進役1人+外部の支援』に、大きな基盤を『まず1つの業務から』に置き換えれば、同じ機能を身の丈で持てます。エンタープライズの型は、規模を縮めて翻訳すれば中小企業にそのまま効きま⁠す⁠。

中小企業に専任のAI部署は必⁠要⁠か

結論から言うと、多くの中小企業に専任のAI部署は要りません。現実的なのは、専任組織の代わりに「経営者+推進役+外部の支援」の3点で機能を持つ体制で⁠す⁠。

理由は2つあります。1つは、AI専任の人材は採用市場で取り合いになっていて、中小企業が新たに雇い入れるのは現実的でないこと。もう1つは、専任を置くほどの業務量が最初からあるわけではなく、まず小さく始めて効果を確かめる段階だからです。器を先に作ると、たいてい空回りしま⁠す⁠。

ここで多くの会社がはまるのが、「詳しい社員一人への丸投げ」です。ITに強い若手や、個人でAIを触っている社員に「あとは君に任せた」と預けてしまう。一見スマートですが、これが定着しない典型的なパターンになります。理由は3つありま⁠す⁠。

  • 本業と兼務で時間がない: 推進は片手間になり、自分の作業を効率化して終わってし⁠ま⁠う
  • 経営の優先順位が分からない: どの業務から手をつければ会社の利益に効くか、担当者一人では判断でき⁠な⁠い
  • 属人化して残らない: その人が忙しくなったり辞めたりすると、取り組みごと止⁠ま⁠る

だからこそ、旗振りと優先順位づけは経営者が握り、現場で手を動かす推進役を一人立て、専門的な設計と教育は外部が補う——この3点の分担が、専任を置けない会社にとっての現実解になります。推進役は新規採用ではなく、いまいる社員の中から選び、育てる前提で⁠す⁠。

経営者・社内の推進役・外部AI推進室による3点体制 経営者 旗振り・優先順位づけ 社内の推進役 現場で手を動かす 外部AI推進室 設計・教育・構築の管理 自走へ 組織として
図1:経営者・社内の推進役・外部AI推進室の3点体制で、自走できる組織を目指⁠す⁠。

AI推進室が果たす4つの⁠機⁠能

専任の部署を作らないとしても、AI推進室が担っていた「機能」は誰かが持たなければなりません。中小企業が押さえるべきは次の4つで⁠す⁠。

1. テーマ選定(どこから始めるかを決める) 業務を棚卸しし、AIが効きやすく、かつ会社の利益につながる業務を選びます。文章づくり、問い合わせ対応、報告書作成、見積りの下書きなど、日常の作業から入ると成果が見えやすくなります。技術から入るのではなく、課題から逆算するのが原則で⁠す⁠。

2. ルール整備(入れてよい情報・使うツールを決める) AI活用でつまずきやすいのが情報の扱いです。ここは正確に押さえてください。入力した内容が学習に使われるかどうかの境界は、「無料か有料か」ではなく「個人向けか法人向けか」です。個人向けのプランは初期設定のままだと入力が学習に使われることがありますが、設定でオフ(オプトアウト)にできます。法人向けのプランやAPIは、原則として入力が学習に使われませ⁠ん⁠。

そのうえで実務の軸になるのは、契約の種類より「入れない情報を決める運用ルール」です。顧客の個人情報や未公開の金額といった機微な情報はAIに入れない、と社内で線引きしておく。あわせて、使っているプランの学習オフ設定を確認する。データの扱いを契約で担保したい場合の選択肢として法人プランを選ぶ、という順番で考えれば十分で⁠す⁠。

3. 教育(全社の底上げと推進役の育成) 2段構えで考えます。まず全社員向けの基礎研修で「全員が同じ前提で話せる状態」を作り、次に推進役となる一部社員へ、より実践的な研修を行います。従業員へのAI研修は、人材開発支援助成金の対象になる場合があり、実質負担を下げられます。ただし対象になるかは研修の設計段階で決まるため、実施前の確認が欠かせません。研修の選び方は法人向けAI研修とは?費用相場・助成金・選び方を解説にまとめていま⁠す⁠。

4. 構築・運用の管理(うまくいった型を仕組みにする) 研修で効果が出た業務を、その場限りにせず仕組みに落とします。効果の大きい業務からAIエージェントとして構築し、1機能から段階的に導入する。保守の範囲を決め、成果を計測し、次のテーマへ回す。この管理を続けることで、取り組みが単発のイベントで終わらなくなりま⁠す⁠。

この4つは、そのまま次の立ち上げ手順に対応しま⁠す⁠。

立ち上げの手順(最初の90⁠日⁠)

いきなり全社導入を目指すと、たいてい頓挫します。最初の90日で「小さな成功を1つ作る」ことを目標に、次の順で進めま⁠す⁠。

  1. 業務の棚卸し(〜2週目): どの業務の何に困っているかを言葉にします。経営者と現場で、AIで楽になりそうな作業を10個ほど書き出すところから始めま⁠す⁠。
  2. テーマの選定と推進役の指名(〜3週目): 効果が見えやすく利益に効くテーマを1つに絞り、現場から推進役を1人立てま⁠す⁠。
  3. 社内ルールの整備(〜4週目): 入れない情報の線引きと、使うプランの学習設定を確認します。ここを先に固めると、現場が安心して触れま⁠す⁠。
  4. 全社の基礎研修(1〜2か月目): 全員が同じ前提を持てる状態を作り、選んだテーマの業務は推進役へ実践的な研修を重ねま⁠す⁠。
  5. 小さく1機能を回す(2〜3か月目): 選んだ1業務でAIを実際に使い、「これまで手作業だった集計が数分で片づいた」といった成果を1つ残しま⁠す⁠。
  6. 定例会にする(3か月目〜): 月1回、成果を確認し、次のテーマを選ぶ場を作ります。ここで取り組みが『続く仕組み』に変わりま⁠す⁠。
業務棚卸しから定例会化までの最初の90日 1か月目 1 業務棚卸し 2 テーマ選定 3 ルール整備 2か月目 4 全社研修 5 1機能を回す 3か月目 6 定例会化
図2:最初の90日は、業務棚卸しから定例会化まで6つのステップを1〜3か月目で進め⁠る⁠。

この90日の狙いは、完璧な体制を作ることではなく、「うちでもできる」という手応えを1つ社内に残すことです。 成功事例が1つ出ると、社内の空気が変わり、2つ目からの推進がぐっと軽くなりま⁠す⁠。

ここで一つ、私たち自身の話をさせてください。AI Advanceは、この推進室の機能を経営者自身が手を動かして回しています。会社のホームページの更新、この記事のような記事制作、そして打ち合わせの議事録から報告書を作る作業まで、AIエージェント(Claude Code)を使って社内で内製しています。専任のエンジニア部隊がいるからではありません。経営者が優先順位を決め、AIに手伝わせながら形にする——まさに「経営者+外部の道具」で推進室を回している状態です。だからこそ、専任がいない会社が何につまずくかも、どう乗り越えられるかも、自分たちの実感として分かりま⁠す⁠。

社内に人がいない場合の現⁠実⁠解

推進役を社内から立てるといっても、「その一人を割く余裕すらない」「誰に任せても本業で手一杯」という会社は少なくありません。この場合の現実解が、外部を『AI推進室』として使うという選択肢で⁠す⁠。

これは丸投げとは違います。丸投げでは定着しないことは、詳しい社員一人に預けたときと同じ理由で起こります。外部を使うときも、旗を振るのは経営者、現場で手を動かす推進役は社内で育てる、という骨格は変えません。外部が担うのは、専任者がいれば持つはずだった「道筋の設計・ルール整備・教育・構築運用の管理」という機能の部分です。人を雇う代わりに、機能を月額で借りる、と考えると分かりやすいと思いま⁠す⁠。

こうした形なら、専任を採用する前に、まず外部と一緒に始めて成果を確かめられます。そして最終的に目指すのは、社内の推進役が自走できるようになり、外部の支援が要らなくなる状態です。内製化がゴールで、外部はそこへ橋を架ける役割、という順番が中小企業には合っています。費用面でも、初回相談は無料で受けられる会社が多く、研修部分には人材開発支援助成金、業務の仕組み化に伴う設備投資には省力化投資補助金といった制度を組み合わせて、負担を下げられま⁠す⁠。

AI Advanceでは、この「外部のAI推進室」を月額で一括して担うご支援を行っています。道筋のコンサル・全社研修と推進役の育成・効果の出た業務のエージェント化・月次の定例会運営までをまとめてお引き受けし、社内のAIチームが自走するまで伴走します。詳しくはAI推進室 立ち上げ・運営支援をご覧くださ⁠い⁠。

よくある⁠質⁠問

AI専任の社員を採用するのと、外部に頼むのはどちらがよいですか。 まず外部と始めて、成果を確かめてから内製化を判断する順番が現実的です。AI人材は採用市場で取り合いになっており、いきなり専任を雇い入れるのは中小企業には負担が大きいためです。外部で回しながら社内の推進役を育て、自走できるようになったら外部の役割を減らしていく形が無理がありませ⁠ん⁠。

詳しい社員に任せておけば十分ではないですか。 一人に任せると、本業との兼務で時間が足りず、経営の優先順位も判断できず、その人が抜けると止まる、という壁に当たりがちです。手を動かす推進役は必要ですが、旗振りは経営者が握り、設計や教育は外部で補う分担にすると、取り組みが個人に依存せず会社に残りま⁠す⁠。

既存のAI研修やコンサルと、AI推進室支援は何が違うのですか。 研修・コンサル・エージェント構築を単発で頼むのではなく、それらを月額で一括して回すのがAI推進室支援です。テーマを選び、教育し、仕組みにして、成果を測って次へ——という継続の管理まで含む点が、都度の発注との違いで⁠す⁠。

小さな会社でも、AI推進室のような取り組みは必要ですか。 専任の部署は不要ですが、機能は必要です。従業員が数十人の会社でも、AIが効く日常業務は数多くあります。経営者と一人の推進役、そして外部の支援があれば、専門組織を作らずに同じ機能を持てま⁠す⁠。

費用はどのくらいかかりますか。 立ち上げの診断と方針づくりは30万円から、月額での外部AI推進室は月10万円から、業務の仕組み化に伴うエージェント構築は1機能なら数十万円規模から、が目安です。初回相談は無料です。研修には人材開発支援助成金、設備投資には省力化投資補助金を組み合わせて負担を下げられる場合がありま⁠す⁠。

Newslett⁠e⁠r

経営者のためのAI実践通信、隔週水曜にお⁠届⁠け

AIに任せてみた現場の実話を2〜3分で。登録無料・配信内容はこちら

AI導入の第一歩は、
課題の整理か⁠ら⁠。

「何から始めればいいか分からない」という段階のご相談こそ歓迎です。経営メンバーが直接お話を伺い、課題を整理して貴社に合った進め方をご提案します。初回相談は無料で⁠す⁠。

お急ぎの場合は info@ai-advance.co.jp へ直接ご連絡くだ⁠さ⁠い