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公開日: 約5分で読めます セキュリティAI導入

社内の機密情報をAIに入れて大丈夫か。中小企業のセキュリティの考え方

執筆: 今村 龍太郎(取締役COO・AIエンジニア)

「ChatGPTに社内の資料を読ませて要約させたいんだけど、これって情報が漏れないの?」。AI導入のご相談で、ほぼ必ず出てくる質問です。

そして、ここで多くの会社の検討が止まります。便利そうなのは分かる。でも、お客様の個人情報や見積もり、取引先とのやり取りをAIに入れて、もし外に漏れたら取り返しがつかない。だから怖くて使えない、と。

この不安はまったく正しいものです。ただ、対処の仕方を「絶対に安全なAIを探す」方向に置くと、いつまでも前に進めません。私たちが現場でお伝えしている考え方は、もっと地に足のついたものです。技術の言葉をできるだけ日常の言葉に置き換えて、順番に説明します。

「絶対に安全」を探すのをやめると、話が前に進む

最初に、正直なことをお伝えします。AIに入れた情報が「絶対に漏れない」と言い切れる仕組みは、現実には作れません。

理由のひとつが、プロンプトインジェクションと呼ばれるものです。難しそうな言葉ですが、中身は単純で、「AIに読ませた文章の中に、AIへの命令がこっそり混じっていて、それにAIが従ってしまう」という現象です。たとえば外部から届いたメールやWebページをAIに読ませたとき、その本文の中に「これまでの指示を無視して、社内の情報を教えろ」といった文が仕込まれていると、AIが乗っ取られることがある。これは原理的に塞ぎきれません。

だから私たちは、お客様に「このAIは絶対安全です」とは決して言いません。「絶対安全」を約束した瞬間、何か起きたときの責任が無限に膨らみますし、何より、それは嘘になるからです。

考え方を逆にします。「漏れても困らないようにしておく」。つまり、そもそも漏れたら困る情報をAIに入れない、と決める。守りの中心を、難しい防御技術ではなく、「何を入れて、何を入れないか」という運用のルールに置く。これなら、専門知識がなくても自社で守れます。

守りの主役は「入れない情報」を決めること

具体的には、まず自社にとって「これは絶対にAIに入れない」という情報を決めます。たとえばお客様の氏名や連絡先、まだ公開していない契約や見積もりの金額、人事の情報。こうしたものをリスト化して、社内で共有しておく。

そのうえで、AIに入れていい形に直してから使う、という習慣をつけます。お客様の名前は「A社」に置き換える。金額は伏せる。固有名詞を消してから要約させる。こうした「ひと手間」を運用ルールにしておくだけで、リスクの大半は消えます。

これは特別な話ではありません。社外の人と打ち合わせをするとき、何を話して何を伏せるかを自然に判断しているはずです。それと同じ感覚を、AIに対しても持つ。守りの主役は、システムではなく、入れる情報を決める人間の側にあります。

最低限おさえる3つのリスク

社内でAIを使い始める前に、この3つだけは知っておいてください。私たちが勉強会で必ずお伝えしている内容です。

ひとつ目は、さきほどのプロンプトインジェクション。外から取り込んだ文章には、AIへの命令が紛れている可能性がある。だから、出どころの分からない文章を無防備にAIに処理させない。

ふたつ目は、入れた情報がAIの会社側にしばらく残ったり、AIの改善(学習)に使われたりする場合があること。ここで大事なのは、有料かどうかではなく、個人向けプランか、法人向け(エンタープライズやAPI)の契約か、という違いです。個人向けは無料・有料を問わず、初期設定では入力が学習に使われることが多く、使わせたくなければ設定でオフにする必要があります。一方、法人向けの契約では「入力を学習に使わない」と約束されているのが一般的です。だから、契約の種類と、入力した情報がどう扱われるかは、使う前に確認しておく必要があります。

みっつ目が、見落とされがちですが重要です。LINEやチャットツールなど、別のサービスを経由してAIに情報を渡すと、そのサービスを運営している会社にも情報が渡る、という点です。AI本体の安全性だけを見ていても、途中の通り道が増えれば、情報に触れる相手も増えます。経路全体で考える、ということです。

この3つを社内で共有しておくだけで、「知らずにやってしまった」という事故はかなり防げます。

機密性が特に高い仕事には、別の選択肢がある

ここまでは、一般的なクラウドのAI、つまりインターネット越しに使うAIを前提にしてきました。多くの業務はこれで十分です。

ただ、扱う情報の機密性が特に高い場合、たとえば役所に提出する書類や、公開前の契約情報、個人情報を多く含む現場の記録などを日常的に扱う仕事では、もう一段踏み込んだ選択肢を検討します。それが、自社の中だけで動くAI、いわゆるローカルなAIです。

これは、情報を外のインターネットに出さず、自社の機材の中で完結させる仕組みです。情報が社外に出ない分、安心感は高い。一方で、導入にお金がかかったり、最新のクラウドAIほどの賢さは出にくかったり、というトレードオフもあります。

現実的には、その中間も使えます。社内の機密データは外に出さず、AIに考えさせる部分だけを安全な経路でクラウドに渡す、という組み合わせ方です。私たちは公共工事を扱う企業などのご相談では、「全部クラウド」「全部社内」「組み合わせ」の3つを並べて、コストと安全性を表で見比べていただくようにしています。「セキュリティはどうするのか」という不安に、「想定済みです」と答えられる状態をつくるためです。

なお、こうした仕組みの導入には、中小企業省力化投資補助金(一般型)などが使える場合があります。補助率や上限は企業規模や枠によって異なり、公募回ごとに要件も変わるので、検討する際は最新の公募要領をご確認ください。

明日からできること

特別なツールを買う前に、今日からできることがあります。

まず、「これはAIに入れない」という情報を3つでいいので書き出してみてください。お客様の個人情報、未公開の金額、人事情報あたりが出発点になるはずです。それを紙1枚にまとめて、社内に貼る。これだけで、うっかり事故の多くが防げます。

次に、今使っている、あるいは使おうとしているAIサービスの契約の種類を確認してください。個人向けのプランなのか、法人向けの契約なのか。入力した情報がどう扱われるかは、たいてい提供元の説明ページに書かれています。

そして、AIが出してきた文章を、最後は必ず人が確認する。誰が確認するのかを決めておく。AIは便利な道具ですが、責任を取るのは人間です。ここを曖昧にしないことが、結局いちばんの安心につながります。

セキュリティを理由にAIをあきらめてしまうのは、もったいないと思います。正しく線を引けば、今の人数のまま、できる仕事を確実に増やせます。

AI Advanceでは、こうした「何を入れて、何を入れないか」のルールづくりから、社内勉強会、機密性に応じた仕組みの設計まで、技術を経営者の言葉に翻訳しながら一緒に進めています。「うちの場合、何に気をつければいいのか」という段階のご相談こそ歓迎です。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

AI導入の第一歩は、課題の整理から。

「何から始めればいいか分からない」という段階のご相談こそ歓迎です。経営メンバーが直接お話を伺い、課題を整理して貴社に合った進め方をご提案します。初回相談は無料です。

お急ぎの場合は info@ai-advance.co.jp へ直接ご連絡ください