会議の議事録ほど、誰も書きたがらない仕事はありません。書く人の負担は大きいのに、出来上がった議事録は、たいてい一度も読み返されないまま消えていく。「書くのが大変」で「書いても使われない」、二重に報われない仕事です。
AIは、このうち「書くのが大変」のほうを、ほぼ解決してしまいました。けれど、本当にもったいないのは「使われない」ほうです。私自身、お客様との面談記録をAIで貯める仕組みを毎日回しているので、その実感を交えてお話しします。
先に結論をいうと、AIで議事録を会社の知識資産にするコツは2つだけです。毎回同じ型(要約・論点・決定事項・宿題)でまとめること、そして決まったことだけを別の場所に貯めること。この2ステップで、議事録は使い捨ての記録から、後で引き出せる知識に変わります。
議事録は、書くより「使われない」ことが問題
多くの会社で、議事録は作った瞬間にゴールになっています。フォルダに保存して、それで終わり。次に同じ話題が出たとき、誰も過去の議事録を探しません。
これは、議事録が「記録」で止まっているからです。記録は、貯まっても探せなければ存在しないのと同じです。議事録の価値は、書いた量ではなく、後で必要なときに引き出せるかどうかで決まります。 AIを入れるなら、ここを変えないと、ただ速くゴミを作るだけになってしまいます。
AIで議事録を作るのは、もう難しくない
仕組みは、ざっくり2つの部品でできています。
ひとつは「文字起こし」。会議の音声を聞き取って、文章に変換する部品です。もうひとつは「要約・整理」。長い文字起こしを読んで、要点や決まったことを抜き出す部品です。この2つを組み合わせると、録音ボタンを押すだけで、会議のあとに整った議事録ができあがります。
専門的な機材は要りません。スマホやパソコンの録音と、いまどきのAIサービスがあれば始められます。つまり、議事録を「作る」ことのハードルは、もうほとんど残っていません。
4つの型(要約・論点・決定・宿題)で議事録を統一する
参考までに、私自身の進め方を紹介します。経営・AI導入支援の仕事柄、毎週いくつもお客様との面談がありますが、その記録をすべてこの流れで残しています。
面談はすべて録音し、文字起こしのツールに通します。そのあと、AIが文字起こしを読んで、決まった型に沿って自動でまとめます。型は、「要約」「話し合った論点」「決まったこと」「誰がいつまでに何をやるか(宿題)」の4つです。
ポイントは、毎回この同じ型に落とし込むことです。型がそろっていると、後から「決まったこと」だけ、「宿題」だけを横断して見返せる。バラバラの文章で残すのと違い、情報が同じ形で積み上がっていくから、会社の記録として検索できるようになります。 ここが、ただ要約させるのとの分かれ道です。
ひとつ気をつけているのは、要約で「脱線」まで削りきらないことです。経営者やベテランの横道にこそ、判断の勘どころが宿っていることが多い。きれいにまとめすぎると、いちばん価値のある部分が落ちてしまう。だから私は、型に沿ったまとめとは別に、元の文字起こしも捨てずに残しています。
なお、議事録には取引先の名前や未公開の数字など、機微な情報が含まれます。AIに渡す前に、入れていい情報かを確認するルールは決めておいてください。入力した内容が学習に使われるかどうかは、無料か有料かではなく、個人向けプランか法人向けの契約かで扱いが変わります。個人向けは初期設定で学習に使われることがあり、設定でオフにできます。法人向けの契約では学習に使わないのが一般的です。詳しくは「社内情報をAIに入れても大丈夫か」をご覧ください。
「作って終わり」と「資産になる」の分かれ道
ここまでで、議事録は速く正確に作れるようになりました。次の一歩が、いちばん効きます。
それは、議事録から「会社の知識」だけを抜き出して、別に貯めていくことです。たとえば、ある会議で「この取引先にはこの条件で対応する」と決まったとします。その決定だけを取り出して、取引先ごとの知識としてためておく。すると次に同じ取引先の話が出たとき、過去の議事録を全部読み返さなくても、要点だけをすぐ参照できます。
会議のたびに、こうした「会社が学んだこと」が一カ所にたまっていく。議事録という使い捨ての記録が、引き出せる知識の蓄積に変わる瞬間です。私の場合、面談記録から「自分はどう判断し、何を助言したか」を抜き出して貯めていて、これが自分の「第二の脳」になっています。その話は「経営者のセカンドブレイン」に書きました。
議事録から、会社の知識がたまっていく
この「貯まった知識」は、人にとって便利なだけではありません。AIにとっての教科書にもなります。
過去の決定や対応の方針がまとまっていれば、それをAIに読ませて、「この件、過去にうちはどう対応した?」と聞けるようになります。さらに進めば、社内からの問い合わせにAIが過去の方針をふまえて下書きを返す、といった使い方にもつながります。これは、社内に散らばった仕事のやり方を一カ所に集めてAIに渡す、いわゆる「会社の頭脳」をつくる第一歩でもあります。
その出発点が、毎週どこの会社でも発生している会議の記録だ、というのが大事なところです。新しく何かを生み出す必要はなく、すでにある会議を捨てずに貯める。それだけで、材料は勝手にたまっていきます。
始め方 — 1つの会議から、型を決める
最初から全社で導入する必要はありません。まず、定例の会議をひとつ選んでください。
その会議を録音し、AIで「要約・論点・決定事項・宿題」の4つにまとめる。これを数回続けるだけで、議事録づくりの負担が減ることを実感できるはずです。そのうえで、たまった「決定事項」を見返して、会社の知識として残す価値があるものを別にまとめておく。この習慣がつけば、あとは会議のたびに知識が積み上がっていきます。こうしてたまった知識を会社全体の頭脳に束ねる進め方は「カンパニーブレインとは|会社の知を組織の資産に」で解説しています。
経験から、もうひとつだけ。録音ツールに任せきりは危険です。私自身、起動し忘れや音声不良で記録がまるごと飛んだことがあります。少なくとも決定事項と宿題だけは、その場で手元にも書き留めておく。これだけで、あとの安心感がまるで違います。
よくある質問
議事録に使うAIツールは何を選べばいいですか。 文字起こしと、要約・整理の2つの機能があれば十分です。専門的な機材は要らず、スマホやパソコンの録音といまどきのAIサービスがあれば始められます。まずは手元で使えるもので試し、運用に乗ってから選び直しても遅くありません。
会議の音声をAIに渡して、情報漏れは大丈夫ですか。 取引先の名前や未公開の数字など、機微な情報は渡す前に「入れていいか」を確認するルールを決めておきます。入力が学習に使われるかは無料か有料かではなく、個人向けプランか法人向けの契約かで変わり、個人向けは設定でオフにでき、法人向けの契約では学習に使わないのが一般的です。
何から始めればいいですか。 定例の会議をひとつ選び、要約・論点・決定事項・宿題の4つにまとめるところからです。これを数回続けて負担が減るのを確かめ、たまった「決定事項」のうち残す価値があるものを別にまとめれば、あとは会議のたびに知識が積み上がっていきます。
AI Advanceでは、議事録の自動化から、そこにたまる情報を会社の知識として活かす仕組みづくりまで、一緒に進めています。「会議の記録を、もっと活かせないか」という段階のご相談こそ歓迎です。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。