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公開日: 約6分で読めます AI導入経営

中小企業のDXは何から始めるか。課題の棚卸しが先

執筆: 池田 哲郎(代表取締役・中小企業診断士)

「DXって、うちみたいな会社は何から始めればいいんですかね」。経営者の方とお話ししていると、この質問を本当によくいただきます。新聞でもセミナーでもDXという言葉は飛び交っているのに、いざ自社のことになると、最初の一歩がどこにあるのか分からない。そういう声です。

正直に申し上げると、この「何から始めるか」でつまずく会社のほとんどは、入り口を間違えています。多くの方が「どのツールを入れるか」「どのシステムが流行っているか」から考え始めてしまう。実は、そこが落とし穴なんです。今日は、ツール選びの前にやっていただきたい「課題の棚卸し」について、現場で見てきたことをもとに整理してみたいと思います。

「DX・AI」という言葉でシャットダウンしてしまう

製造業の経営者の方を支援していたときのことです。DX、IoT、AIといった言葉を口にした瞬間に、表情が曇ってしまう。「うちにはそんな難しいことは無理だ」と、話が始まる前に心を閉じてしまうんですね。

これはもったいない。DXという言葉が大きすぎて、何をどうすればいいのか見当がつかないから、拒否反応が出るだけなんです。だから私は、まず言葉を脇に置きます。「DXをやりましょう」ではなく、「いま現場で一番困っていることは何ですか」から聞く。これだけで、会話がぐっと前に進みます。

つまり、DXは「最新技術を入れること」から始まるのではなく、「自社の課題を見える形に並べること」から始まる。順番が逆なんです。

なぜツール選びから入ると失敗するのか

実際にあった話です。ある会社が「クラウドで月額が安いから」という理由でシステムを導入したところ、自社の業務に合わず、かえって現場全体が混乱してしまいました。安いから良いものではない。当たり前のようでいて、これがなかなか難しい。

なぜこうなるかというと、自社の業務課題を言葉にしないまま、製品の比較から入ってしまったからです。何を解決したいのかが定まっていないので、「安い」「便利そう」といった表面的な物差しで選ぶことになる。結果、入れたはいいが使われない、現場が振り回される、ということが起きます。

ですから、システムやAIの相談を受けたとき、私はまず製品比較に入りません。代わりに、こう問いかけます。「いま、その業務に毎月どれくらいの時間とお金がかかっていますか」。これを一緒に棚卸しする。月額の安さは、判断の一番最後の要素です。先に課題を理解する。それを解いてくれるものを選ぶ。この順番を守るだけで、失敗はぐっと減ります。

課題を見つける「4つのチェック」

「課題を棚卸しすると言われても、何が課題か分からない」。そう感じる方も多いと思います。そこで、AI導入の相談の冒頭で必ず使っている、簡単なチェックを紹介します。次の4つです。

一つ、繰り返し行っている作業。二つ、やり方のパターンが決まっている作業。三つ、時間がかかっている作業。四つ、人がやるには退屈な作業。

この4つに当てはまる業務を探してみてください。たとえば問い合わせ対応は「繰り返し・パターン・退屈」に当てはまります。見積書の作成は「繰り返し・パターン・時間」。日程調整は「繰り返し・退屈」。在庫確認は「繰り返し・時間」。こうして並べてみると、自社の中に候補がいくつも見つかるはずです。

セミナーでも「4つ全部に当てはまる業務を3つ挙げてください」とお願いすると、皆さん次々に手が挙がります。これらがそのまま、仕組み化やAI活用の最初の候補になります。難しい技術の知識は一切いりません。日々の業務を、この4つの目で眺めるだけでいいんです。

棚卸しした課題を「外向き」と「内向き」に仕分ける

課題が並んだら、次に仕分けをします。私たちが経営診断で使っている分け方はシンプルで、「外向き」と「内向き」の2つです。

外向きの課題とは、お客様に向き合う仕事です。問い合わせへの丁寧な対応、クレームへの対応、提案。中小企業が大手やネット通販に勝てているのは、たいていこの手厚さがあるからです。だから外向きは安易に自動化せず、むしろ人を厚くする。AIには下調べや一次整理など、人を支える脇役を任せます。

内向きの課題とは、社内の事務作業です。紙の集計、転記、帳票処理、書類探し。ここは付加価値を生みにくいので、思い切って自動化や仕組み化を進める。そして空いた時間を、外向きの仕事に回す。「外向きは人で強化、内向きは自動化」。この一行を頭に置くだけで、優先順位がはっきりします。

ここで強調したいのは、自動化の目的は「人を減らすこと」ではないということです。狙いは、今の人数でできることを増やすこと。事務に取られていた時間をお客様対応に回せれば、同じ人数のまま会社の力は上がります。

データが散らばっているなら、そこが先

もう一つ、見落としがちな注意点があります。AIやシステムを入れる前に、足元のデータが整っているかを確認してください。

ある事業者を支援したとき、お客様の情報がフォームの回答、アンケート、宿泊者名簿とバラバラに散らばっていて、つながっていませんでした。この状態でいくら高機能なツールを入れても、効果は出ません。まずは散らばった情報を一つの表にまとめる。地味ですが、これが先です。データが整って初めて、「この顧客にはこういう案内を」といった一歩進んだ活用ができるようになります。

紙やバラバラのExcelに情報が眠っている状態なら、急いでツールを探すより、まず整理から。回り道に見えて、これが結局いちばんの近道になります。

明日からできること

難しい準備はいりません。今日から一つだけ動いてみましょう。

一つ目。紙を一枚出して、いま現場で困っていることを思いつくまま書き出す。きれいにまとめる必要はありません。「あの作業、毎回時間がかかる」「あの書類、いつも探す」で十分です。

二つ目。書き出した業務を、さきほどの4つのチェック(繰返し・パターン・時間・退屈)で見直す。当てはまるものほど、仕組み化の効果が出やすい候補です。

三つ目。その候補を「外向き」と「内向き」に分けてみる。内向きで、4つのチェックに多く当てはまるものから手をつける。これが、無理のない最初の一歩になります。

なお、こうした業務改善のための設備やシステムの導入には、中小企業向けの補助金が使える場合があります。たとえば中小企業省力化投資補助金などです。ただし補助率や上限額、対象は公募回ごとに変わりますので、検討される際は必ず最新の公募要領をご確認ください。制度ありきで考えるのではなく、あくまで課題が先、制度はそれを後押しする手段、という順番を忘れないでいただきたいと思います。

DXは、大きな投資や難しい技術から始まるものではありません。自社の課題を一枚の紙に並べ、優先順位をつける。そこからすべてが始まります。とはいえ、いざ自社の課題を仕分けし、どれから手をつけるかを決めるとなると、第三者の目があったほうが進めやすいのも事実です。AI Advanceでは、この課題の棚卸しと優先順位づけを含めた経営診断から、仕組みづくり、社内人材の育成までを一貫してお手伝いしています。「うちの場合、どこから始めるべきか」という段階のご相談こそ歓迎です。初回相談は無料ですので、お気軽にお声がけください。

AI導入の第一歩は、課題の整理から。

「何から始めればいいか分からない」という段階のご相談こそ歓迎です。経営メンバーが直接お話を伺い、課題を整理して貴社に合った進め方をご提案します。初回相談は無料です。

お急ぎの場合は info@ai-advance.co.jp へ直接ご連絡ください